column

うるさい静寂、静かな騒音。

部屋に突然アマガエルが出現。

まだ「おたまじゃくし」から「あまがえる」になったばかりであろうミニマムな若造でした。

多分網戸の穴から進入してきたのであろう。

網戸の穴。煙草の火で開いた穴。揺れ動く心が作った穴。馬鹿の穴。

 

こんな時分の季節、遡ることウン年、友人Tと満月を肴に俺の部屋で酒を呑んでいました。そのうち網戸にとまる羽虫がやたらと気になりだした友人Tは、いつの間にか俺との会話もちぐはぐになるほど気づいたら意識が網戸に集中していました。

ぷかぷかと絶え間なく吸っていた煙草の煙を網戸に吹きかけ、羽虫の様子をじっと観察していたようだけれど、一向に虫たちは逃げようとも力尽きる気配を見せようともしない。

それが気に入らなかった彼は煙草の火を網戸に近づけ虫を撃退しようと試み始めました。

はじめのうちは俺も面白半分で見るともなく彼の行動を眺めていたんですが、よくよく網戸を見ると点々と網戸に穴が開いているじゃねえか。

「おい!やめろバカっ」

と俺が声を荒げたとき、やっと彼は彼の煙草の火が網戸を溶かしていることに気づいたようでした。馬鹿です。

集中するのはいいことですが、網戸に穴をあけていることには気づけ馬鹿。

そういうわけで、その後、点々と穴の開いた網戸は、夏に近い季節を迎えるたびに虫を俺の部屋に招き入れる広き門となったわけです。

しかしアマガエルとはでかい獲物がやってきたもんだ。

つまんで庭にある夜露に湿ったナスの葉に乗せてやりました。

とても困った時に、あのアマガエルが、蜘蛛の糸のように俺を助ける材料になることを密かに願って、就寝。

YES.koo/HOZZY

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