キュウリマン。
暖炉に頭を突っ込んで、煙突の口から見える長方形の空を眺めていた。時々風に揺られてススがはらはらと落ちてくる。何粒かは鼻の上に舞い降りて何粒かはそっと顔をかすめていった。もうかれこれこんな風に寝そべって4時間近くが経つ。実際は2時間ほどかも知れない。なにしろ一昨日時計を無くしてから自分が何回食事をしたかも思い出せないほどずいぶん時間音痴になっている。基準が無い今時間はひどく伸びたり縮んだりしていた。そんな心許ない感覚的4時間の中、小さい空に見えたのは鳥だけ。晴天で雲もない今日の空は退屈を極めていた。変化をくれた鳥達に感謝した。そいつらはトンビ2、ツバメのような鳥1。トンビは同じやつがまたやってきて飛んでいただけかもしれない。区切られた狭い空からは彼に仲間がいるのかどうかさえわからない。ツバメのような鳥も小さすぎて判断がつかなかった。だから勘でツバメということにしておく。私はツバメが好きだ。食べたくなるうしろ姿が好きだ。
暖炉。使われなくなって随分経ちそうなこの暖炉。薪をくべて火をおこし部屋を暖めるだけが暖炉の使命じゃない。それを私は証明したかった。頭を突っ込み長方形の青空を眺める事でそれに近づける気がした。サンタクロースが今煙突に飛び込んできたらさぞ驚くだろうななんて、ここで今私が死んだら発見後きっと変死体として処理されるんだろうななんて、世界中の木々が突然真っ青に染まったとしても今の私には知ることができないんだよななんて、メーワイは元気でやっているかななんて、私は少しまどろみながらとりとめのない思考をつなぎ続けていた。
YES.tori/HOZZY