白。

金属の輪っかを三つ通り抜けた時、僕は重力から解放された。
半径50センチ程のこの輪っかはキュー海岸の砂浜にそれぞれ斜めに立ちながら刺さっていた。アルフェゲという友人が僕に宛てた新しいメッセージだった。
「右手にリンゴを左手に包帯を」
文字も言葉も捨ててしまった彼はテープレコーダーのようにこの海岸に想いを記憶させる。僕は4日に一度ここを訪れて、彼の伝言をキャッチしにくる。僕には彼のようなやり方ができないからメッセージを絵に描いて置いていくことにしている。彼はそれを何故かしきりに「霧雨のようだ」といつも伝言の中で繰り返していた。ただ僕らはお互い顔を会わしたことは一度もなかった。アルフェゲの顔も体型も実際のところ性別さえも確かなことは会ったことがないからわからない。しかしそこは僕らには重要ではないのだ。重要なのは、僕らが「同志である」という事を確信し続けること。「解放」に向けて歩みを止めないこと。これが僕らのつながりのほぼ全てだったと言っていい。そんな僕らは、彼のおかげでとうとう先日「解放」された。重力を失い、長い葛藤を失った。タクロウはそんな僕を遠くで眺めていた。
YES.cue/HOZZY

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