『魚と猫とゴムとネコ』の7。

『魚と猫とゴムとネコ』の7。

シュンスケはタエコに現像させておいた例の写真をポケットに忍ばせながら、はやる気持ちを抑えるため、わざとゆっくり、のろのろと道の隅を歩いていた。
「くくく。これでやっとあいつらに仮を返せるぞい。」
にやける顔を、わざと険しくさせるものだから、彼の顔は不細工な般若のように酷い形に変わっていた。
ブロック塀の上で日光浴をしていた猫が、彼のその歪んだ顔を見て、一目散に北の方に逃げていった。
今日は月に一度の会合で、ヤマウラ商店街の人間たちが「みどりの家」に集まることになっている。つまりそれは言い換えれば例の自慢大会の日である。
この日彼は仲間たちの中でも特に、前回の自慢話の場で白いコウモリの話をしてその日の話題を全てさらっていった、加藤という人物に大きな対抗意識を燃やしていた。
輪ゴムの話をどうスリリングにエキサイティングにアンビリーバボーに熱弁するか、彼は一晩寝ずにじっくりと考えた。
そのせいで、目は稲妻が走ったように血走っていた。
トマトアイ。
「加藤め、今日は俺の勝ちだわい。待っとけよー。」


少女の母親は、テーブルの上に、ぽつん、と取り残された、やけに古びた輪ゴムをつまみ上げると、パタパタと工具置き場の棚に向かった。
「んーこれのどこが変わった輪ゴムなのかしらねぇ。お父さん何だかごちゃごちゃ言ってたけど普通の輪ゴムじゃない。汚ない灰色。けどー、けどけどー、無駄遣いはーよーくありませーん。」
変な節をつけながら、鼻歌まじりに彼女はその輪ゴムを輪ゴム箱の中へ放り込んだ。
「あっ、いけない。洗濯物干さなきゃ。」
そう言って彼女がくるりと回転した時、ぴんぽーん、と少し間の抜けたインターホンの音が、リビングに唐突に響いた。
「加藤さーん、お届けものでーす。」



「シュンスケさーん、本当ですかー?その話。」
「バカ言え。写真まで見せたろうが。本当の本当に、この輪ゴムは魚の腹の中からでてきたんよ。ちゃんと証拠もあるんじゃ。今回は俺が一番だとさっさと認めろや。」
「うーん、本当かなぁ、、、、。」
シュンスケはわざとらしく、大きなため息をついた。
「お前いいかげんにせーよ。つーかよ、俺がお前らに嘘ついたことあるか?」
「んー、まぁ、確かにそうだなー。うーん、あんまないかも。」
「だろうが。」
「うーん。」
「あ?」
「いや、はい。」
「あー?」
「うん!ないです。」
ふふっと、シュンスケは笑って頷いた。
「よしよし、わかればいいんよ。よっしゃ、今回は俺の勝ち。それでいいな?ん?はっはっは!わかればいいんじゃ。これ、加藤よ、この輪ゴムお前にやる。」

YES.kappa/hozzy

hozzy