増幅したものたち。

ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる。

腹が猛烈に痛くなってきた。

これは食あたりとか、便秘とか、そんな類いのもではない。
なぜなら後頭部あたりに後頭部が三個あるようにぼんやり感じられるからだ。
要は、輪郭がぶれるように後頭部の焦点が乱れ始めているのだ。

焦点、なんてまるで後頭部が視点のような言明であるが、後頭部もやはり視覚的質量を持っているのだ。
なぜなら、後頭部はただの「頭の後ろの部分」ではないからだ。
そこは、確実に視点的イメージを持っており、ただの感覚を携える、もしくはただの便宜上の言語に対応する「部分」ではない。
想像を大幅に越えて、私の全体を形作る身体図形に大きく食い込んでいるのだ。
それはパズルのように、数量的計算のように、何度でも同じように分解されては組み立てられはしないものである。
紙の上に書かれた、文字に、言語には決して追いつけないものである。
なぜなら、今は「今」でしかないのであるからだ。
今を今と言った瞬間にその今は今ではなくなるのであるからだ。
それを応用したのが、私がさきほどから熱弁しておる後頭部の説明に近いものである。
おかしく言葉が同じ所を巡り始めてしまったら大変になるはじまりであるから嫌なのだ。
嫌は嫌なのだ。

つまるところ、自律神経失調症による腹痛というところだろうか。
薬を飲まなければならない。

「申し訳ないが、やっぱり水を一杯もらえないか?」

タフガイのボーイにあくまで平静を装って注文をした。

「かしこまりましたお客様、、、。ミネラルウォーターでよろしいでしょうか?」

「うむ、、、、あー、Bタイプでよろしく頼む、、」

「Bウォーターでございますね、かしこまりました。おまちくださいませ、、、」

ふう。
米国風筋肉小僧が奥の厨房に消えたのを見計らって、軽く屁をこいた。
なんといっても腹が痛いのである。
斜め向かいに座った女が一瞬こちらを向いたが、すぐに目をそらした。
冷や汗がじわりと脇の下のシャツを湿らす。
もう一度ひっそりと屁をこいた。

しかし、よくわからないのがA、B、Cと並ぶミネラルウォーターのメニューである。
先ほどは適当にBと頼んだのだが、なにせこの店に来て水など頼んだことないものだから(ここで水など本来実に邪道的行為である)少々ドキドキしている。
なんといってもここは変態料理屋である。
水もただの水なんてことはないだろう、と、今までに無い妙な背徳感をまとった期待が膨らんでゆく、、、、、、。

ほどなくして、タフガイが水を運んできた。

「おまたせいたしました、Bウォーターでございます、、、」

「、、、ん~?」

それはコップに入った透明の液体。
、、、なんとも、ただの水であった。

私は痛みを忘れて激怒した。
久しぶりに本気で怒ったのだった。
しかしその瞬間、やはり屁は大きくでたのであった。

タフガイはひるむ様子も無く、とんでもなく冷静まなざしで、私は聞いてません、と律儀に無言でアピールするのであった。

私は、どこへ、ゆくのだろう。

何も見えなくなったまま、やり場無くコップに手をかけた瞬間、微かに何かが違うことに気がついた。
コップの中は水である。
Bタイプの水である。
もっと良く目を凝らしてみる。
すると底のほうに何かが沈んでいることに気がついた。
それは後から水の中に入れられたのであろう。
数個の小さな気泡をまとい、不慣れな様子で沈んでいる。

歯であった。

YES.btype/hozzy

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