イノキ。
いかんせん私んちの周りは坂が非常に豊富でして、駅に行くにはずっと下り坂なんだけど帰り道はずっと上り坂、自転車を漕ぐにも電動付きじゃなきゃとてもじゃないがくじけてしまいそうな勾配に、買い物するにも一苦労。
基礎体力つけるにはいいかもしれんが、日常とは常に「面倒」を膨張させる装置であるからして、強制的な健康さなんかよりも、たるんだ快適さの方が住んでる町では美徳である。
健康でありたかったら、走ればよろしい。
無理に坂を歩かされるなど健康の「け」の字くらいも健康的ではない。
という理屈から、住んで半年足らずで「車」が欲しいなあ、なんて贅沢な妄想を抱いておりました。
そんな折り、なんともグッドタイミン「グ~!」で(この年あたりちょうどエドさんがブレイクしていた)、親戚から「車を買い替えるから今のやつを使わないか?」というファンファーレが鳴り響くかのような打診があった。
感謝永遠に!
かくして、うちに8万キロ越えのファミリーカーがやってきた。
現在は10万キロをゆうに更新して、しかしまだまだ良い音だして精力的に坂を上り下りしてくれている。
見た目は個性的な色で、正直カッコ良くはない笑(ごめんなさいくれたお姉さん)、それにこの時代にあってかなり燃費悪い(ファックエコロジー!)
しかし、俺にとっては孫悟空にとってのきんとうん、タオパイパイにとっての丸太みたいなあの筒状のもの、今はなきゴーイングメリー号、キキのホウキ、宇宙戦艦ヤマト、木村拓哉、イビョンホン、鏡月、、、、、並に偉大な存在です。
ただほんと最近燃費わりー。どうしよう。
んでね、今日ちょっと必要なものがあって、よく通る道を突っ走ってたわけ。
その店に行くのに行きは何ともないんだけど、帰るとき通る道にやけに道路が右側に盛り上がって施行されてしまった所があるのですよ。
二車線の道だから、そのポイントを知ってたらわざわざそこ通らなくても隣の車線に逃げちゃえば「ぐおん」ってなんないで(結構ぐおんってなる)通れるわけ。
けど、俺はそこ通るのが毎回楽しみでしょうがないわけ。
むしろあえてアクセル踏み込むわけよ毎回「いえーい」って。
チンサムロードという概念が一般化するよりまえからそこは「いえーい」だったの俺にとって(芸人Mさんよ、チンサムとかうまいこと言うなよ。なんかあの瞬間の価値が下がっちまうじゃんかよ)
で、今日もまだかまだか、と、そのでっぱりにもの凄く期待を込めて集中してたわけ。
もう暗かったから、ヘッドライト凝視して。
「いえーい」
今日も実に見事なる「ぐおん」を達成し、滑らかに平坦な道に到達した瞬間、なんとも言えない幸福が我を包み込んだ。
そして、その刹那一瞬後に、唐突に新たなる楽しみを思いつく。
『バックミラーで、後ろの車のぐおん具合を測定してやろう』
本当に、限りない一瞬というものが存在するとすれば、今日のこの瞬間の、0コンマ2秒くらいの間だろう。
思考は驚くほど早く、時間は沼のように停滞していた。
これほんと。
眼球は見ていた、鋭く深く、バックミラーという審判の門を。
まるで妖精のように輝くその後続の車のヘッドライトは、私の真剣さに呼応するかのごとく「今よ、今こそよ」と「ぐおん」の瞬間を待ちわびていた。
こい!こい!!
ああ!見せてくれよ、最高のジャンピングを!
上村愛子が去年果たせなかった想いを、ここで見せてくれよ白いセダン!!!
よし!
くるっ!
ひょいっ
って!?!?!
ええええええ!!!!?????
うそーーん。
その後続のセダンさんは、
私が愛する右上がりのもっこり施行ポイントを、
いともたやすく、むしろ美しく優雅に、たぶんすげー金持ち、余裕的に、回避したのでした。
大人!!!
この道路、二車線あるんだよ?
よけるくらいなら、ふつう左車線走ってるよ。
このモッコリを知らない初心者は間違いなく予想外な「いえーい」を体験するハメになるよ。
わりと飛ばせる道だから、もっこりに対処できないはずだもの。
にんげんだもの。
しかも夜という、道路状況が最高に確認しづらいコンデション。
間違いなく後ろの車は、この道の、あのポイントを知っておった。
ぐおんを知っておった。
なのに、
あえてその道を突き進み、且つ、「ぐおん」を回避するなど、余裕に満たされた熟成人間の高貴なる沙汰。
正に、ロハス!!!!
っつーか言わせてくれよ、今年もロハスって!!!!
そんな簡単に時代の急流に沈んで良い単語じゃないんだから「LOHAS」は!!!!!
ライフオブヘルスアンドサスティネイビリティーだぜ???!
ロハスちゃんは!!
継続を(サスティネイビリティー)しなければ、死ぬに死ねないでしょう。
むしろ殺してはいかん、人間の根源は、自然なのだから、、、、、、。
ふぁあああああああああああああああああああああああっく!!
今日も美しい、丹沢の連なり。
自然天然水も、この景色+ブリタには敵わないナリ。
そう!!
後続車は、ロハスやろうだったんだよ。
しかもかなり高純度の!!!
俺は、私は、僕は、この瞬間「大人」を見た。
大人ってなんだろうって、この禅問答のような問い。
一つのヒントが、今日のこの「ぐおん」回避車両にあった気がしたのでした。
バックミラーでそれを確認した時、俺は「おーーーーーい」って一人で叫んじゃったもん。
そりゃ反則だろ!って。
でも、50メートルくらい進んだら、なんだかその振る舞いが深く感じられて、「今日コラム書こう!!」って気持ちにさせてくれたのでした。
すごいよね、大人になるって。
『伝言』の歌詞の中にある「大人になるってどんな事と 昔の僕が問いかける」ってあるけど、今日それを見た気がした。
「いえーい」を回避できる「余裕」!!
これが大人の絶対条件なのだろう。
バックミラーに映る暗闇は、運転手の顔を、眼鏡をかけている人物としてしか浮かび上がらせなかったが、
確実に、成熟した人物であると想う。
俺より年下だったら、マジへこむ。
よけるなんて俺にはまだ無理。
いえい、には勝てないざんす。
誰乗っけてても、ジャンプしたい。
女子供もジャンプさせたい。
文句言われても飛びたい。
この冬はとことん鍋食いたい。
YES.right mokkori/hozzy